栽培ハウスにて

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人事担当者との話は終わった。
「では雇用条件はご了解ですね」
商社マンとして三十五年、営業部長まで勤めた俺は定年を迎えて再雇用の説明を聞いていた。勤務を延長した。条件は悪くないが勤務が新ビジネス分野になる。
「では、こちらへ」と隣室のベッドに寝かされた。「背中を向けてください」。俺は背中を出す。尾骶骨あたりが押された。
「コンセント取付完了です」
翌日からビニールハウスに入る。トマト、キュウリなどを栽培している。
入口で管理ロボットに背中にケーブルをプラグインされた。
ここで働くのは老人ばかり。全員背中からケーブルを引いている。動くと身体が楽だ。ケーブルで電力を送っているらしい。
ハウスは広い。遠くにも老人が働いている。俺のケーブルでは短くてあそこまでは行けない。
「あの人のケーブルはどうして長いのですか?」
ロボットは答えた。
「毎年、契約します。更新した人には再延長ケーブルをつけます」
その他
公開:21/10/15 09:44

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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