爪の音

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私がいつもの朗読会に出ておりますと、一人の青年将校が部屋に入ってきました。
目が合った瞬間に瞳の綺麗な美しい男の人だと思いました。
会を終えても立ち去らなかったので、思わず彼に
「何か?」
と問いました。
「明日も来ますね?」
まるで私への命令のように、返事も待たずにそう言い残して彼は去っていきました。

翌日もやはり彼が来ていました。
朗読会を終えると、
「美しい手ですね」
彼は品のある手つきで私の手をとります。
「こんなに美しい爪を僕は見たことがありません」
「まあ!」
すると彼は目を瞑り、私の爪に耳を寄せます。
そしておもむろにポケットから爪切りを出すと、私の爪を切りました。
パチンッ
「ああ…!なんという美しい響き。これに優る悦びはない」
彼は吸い込まれるような妖艶な笑みを浮かべ、一礼して去っていきました。

以来一度もあの方は顔を見せません。
もう来ては下さらないのでしょうか…。
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公開:21/10/14 19:47
爪切りの音マニア

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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