最高のおもてなし

0
2

人生最悪の日、私は猫の鳴き声に誘われ黒猫亭の扉を開いた。
誰もいない店内、近くの席へと座る。人ではなく猫がメニューを持ってきたのを見て驚いた。
猫は私の膝に手をかける。もしかして甘えたいのだろうか?
膝に乗ってきた猫を優しく撫でる。艶のある黒は不吉の象徴どころか憧れてしまう。注文と時間を忘れ、猫を撫で続けた。
いつの間に出されていたのだろう?珈琲の香りに意識を引き戻す。
砂糖もミルクも入れずに飲んだ珈琲だが何故かとても甘かった。
メニューを見ると『当店の珈琲は不幸の蜜を使用しており、不幸な方なら甘く、幸福な方なら苦くなります』と書かれてあった。
人の不幸は蜜の味と言うが自身の不幸は餡子の様に甘いのか…その甘さが止まっていた思考を動かし始める。美味しい…と思うと同時に珈琲は苦くなった。幸せを感じた証拠だ。
黒猫亭で最高のおもてなしを受けたこの日、今日が人生最高の日へと生まれ変わった気がした。
公開:21/10/11 21:03

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容