クジラの歌

雌雄のザトウクジラの音波によって奏でられる歌が聴ける岬がある。
聴こえるのは子供達だけではあるが。
毎日のように子供達がやって来て、一緒に歌うのをこのザトウクジラは楽しみにしていた。
しかし、岬へ行くには、車の往来が激しい大きな幹線道路を渡らなければならない。
信号機のない横断歩道1本。
景観を損ねるという理由で歩道橋はない。
横断歩道で渡ろうと手を挙げても、なかなか車は止まってくれない。
ほとんどの車は横断歩道で一時停止してくれないのが現状、危険だ。
子供達が来てくれるのは嬉しいが、事故に遭わないか、ザトウクジラは毎日心配だった。
ある日、雄のザトウクジラが激しく往来する車に向かって、
様々な低周波の音波をぶつけていた所、ある低周波をぶつけると
緩やかに車のブレーキが掛かり停車する事に気が付いた。
その後、この低周波で子供達が渡ろうとすると車は横断歩道で一時停止するようになった。