夕陽ヶ丘サンセット802

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涼しげな風が頬を撫でる。
日中が暑かった分、余計に気持ちが良い。
開け放った窓から夕陽が差し込む。
あと5分もしたら沈んでしまうだろう。

この部屋に決めたのもここから見る夕陽が綺麗だったからだ。
夫にちらりと視線を向ける。
穏やかな表情で目を瞑っていた。
部屋も夫も真紅に染まっている。

プロポーズされたのも夕陽が綺麗な日だった。
グラスの白ワインは茜がとけて甘く、小さなダイヤは朱く輝き眩しかった。
「雲一つ無い夕焼けを3日も待ったんだ」夫は結婚記念日に毎年そう言った。
「そのおかげで私は婚期が3日も遅れたのね」私達は笑い合った。

もう一度夫に目をやる。やはり目を瞑ったままだ。
陰影が濃くなった部屋は墨汁を垂らした様に暗い。

どうしてこうなってしまったのだろう。
私は赤く染まった両の手を沈みかけた夕陽に透かした。
黒くくすんで醜かった。
手からこぼれたそれが、空を闇に塗り替えていく。
その他
公開:21/10/09 09:53

小川さら

口下手で面白い事が言えません。
だから書いてみます。

忌憚のないご意見をお待ちしております。
 

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