メール川

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 石に腰掛け、川の流れに素足を浸す。
 冷たい。次に感じたのは熱さ、そして少し不快な生ぬるさだった。

 遠くに農作業を終え、泥だらけになった父が歩いてくるのが見えた。
「この川も昔はもっと流れが激しかったもんだ」
 父は言う。昔、といってもほんの少し前までこのメール川は激流で、流れをうまく調整できなければ、あっという間に氾濫してしまうほどだったのだと。
「流れも安定したし、ずっと見張ってなきゃいけないってこともなくなったからなあ。お前に教えることも多くはないんだ」
 父はメール川の見張り兼管理人で、僕はその後継ぎってわけだ。
 
 眼前に聳える青々とした山々は、透き通った空にくっきりと映え、初秋を迎えたというのに自然はまだそれを受け入れていないように見える。その自然の景観をメール川を流れる文字流が引き立てている。

「今じゃライン川が大変みたいだからなあ」
 父はそっと呟いた。
その他
公開:21/10/09 07:58

おおつき太郎

面白い文章が書けるように練習しています。
日々の生活の中で考えたこと、思いついたことを題材にしてあれこれ書いています。


Twitterはじめました。
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