0
2

ある日、補聴器屋の店主は、超高性能な補聴器をつくった。

「じいさん、それ、普通に聴こえる人に付けたらどうなんの?」

さあ、分からん、と店主のじいさんは言う。確かに、やってみなければ分からない。なら、俺が付けてやろう、と若い男は言った。無論、彼は正常な耳を持っているため、遊びたいだけだ。

わかった、とじいさんは言い、補聴器を手渡した。彼はそれを、耳にはめ込んだ。すると、話し声が聴こえてきた。

「ミクロってさ、こんな感じ?」

「じゃね? 取り敢えず、小さいけど」

「届くの?」

「届いたんだって、昨日」

しばらく、他愛のない話が続く。あまりに聴き入っている様子なので、店主のじいさんは声をかけたが、彼はそれを手で制した。

「ミクロの世界は過去に繋がってる、って、今日の教授の話な」

「そうそう。だから声も、届くんじゃないかって」

翌日。

男は大学で、ミクロの講義を受けた。
SF
公開:21/10/10 10:59

藤崎正(セカンドオニオン)

2021年2月に、物語を考えるのが好きで始めました。
もしよければ、コメント残して頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

追記:2021.11.14 名前を『藤崎正』(フジサキショウ)に改名しました。一応分かりずらいと思うので、旧名(セカンドオニオン)は、付け足しで残しておこうと思います。


物語.com https://monogatary.com/user_page/story/f73e9d0f-3f97-11ec-81c5-0242ac120002

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容