宇宙刺身

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この銀河にはとびきり美味しいものがある。
産まれたばかりの惑星、輝きを失った星のかけら、アテのない放浪をしてきたデブリ。
どれも鮮度が良く、そして表裏一体のように悪い。

「これは……美味いっすな」
「そうだね。とても美味しいわ」

銀河を旅する者はこれらを主食にすることが多い。
種族の違う2人は生きてきた星も、育ってきた環境も違う。それこそ価値観の違いで喧嘩をすることも多い。
だが、この時だけは意見が一致する。

「これはちょっと薄味っすな」

誕生したばかりの、いわば新星は味が浅い。だがシルクの衣のようにとても柔らかく、口内で溶ける。

「私のは……誤って食べてしまったみたい」

ある程度、時代の経っているものは至高。
その惑星の知識や、歴史が頭に流れてくる。長ければ、長いほど味は増す。
しかし同時に莫大な量の情報を得ることになり、そしてその星の文明が一つ消えることになる。
SF
公開:21/10/10 10:41

雪場知花

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