最高のおもてなし

彼を私の実家がある田舎へと連れてきた。
「お前の田舎、何もないのな」
開口一番文句を言う。イラっとするがそんな時は深呼吸。あ～、空気が美味しい。
「ここWi-Fi使えないのかよ…あ～、バッテリーの減りも早ぇ！」
文句ばっかり。もう！スマホばっかり見てないでこの風景堪能してよ。
「はいはい…ん？なぁ、あれって何だ？」
おっ！早速食いついたぞ。私は彼に故郷の自慢を始めた。

３日後。実家を出る時、彼の方が私より名残惜しそうだった。
「初日、悪口ばっか言ってごめんな」
気まずそうに言う彼に深呼吸を勧めた。
「空気って、こんなに美味いんだな。水だって凄く綺麗で飲みやすかった。果物も甘くて最高だった」
目を輝かせて笑う彼。
良かった。彼はどうやら土地に気に入られたようだ。
私の故郷は、人が住む土地を選ぶんじゃなくて、土地が住む人を選ぶ。
故郷からの最高のおもてなしに彼は今も舌鼓を打ちっぱなしである。