日焼けサロン

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どうやら次は、俺の番らしい。

「……それじゃ行ってくるよ。皆元気で過ごせよ」
「兄ちゃん。行かないで!!」

小さな弟が俺の足に必死にしがみついた。俺は、弟の頭の上にぽんっと手を乗せていった。

「お前もいつか旅立ちの時がくる。立派な男になれよ」

弟は別れの時を泣いていた。

「お前、本当に日焼けサロンに行くのか?」
「ああ、行くよ。俺は選ばれてしまったようだからな」
「……怖くはないのか?」
「怖いさ。俺のこの肌の色がこんがりと焼けてしまう事には、さすがに少しは抵抗があるさ」
「……だが勤めを果たすんだな」
「ああ」
「今なら逃げられるぞ」
「逃げられないさ。もう俺は、掴まれているんだから」

俺は大切な家族や友人達に見送ってもらい、日焼けサロンに出かけた。
いいや、日焼けサロンではない。

俺は牛肉。
焼肉になるべく、ホットプレートの上に持っていかれる。

……これも運命なのさ。
公開:21/10/06 12:01

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

https://youtu.be/frouU2nCPYI

・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

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ブラウン・シュガー
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