秋桜星

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 学校帰り、近くの秋桜畑で座り込んでいた。
 風が冷たくて気持ちがいい。だけど、秋は心を掬われるほど悲しくて、寂しい季節だ。懐かしい秋。季節は残酷にうつり変わる。

 どれくらいそうしていただろうか。日は暮れ、辺りは暗くなっていた。
「もうすぐ秋桜が降るよ、星みたいに」
 顔を上げると背の高い少年が立っていた。
「秋桜星をつかまえると、永遠に忘れられないことでも、忘れることができるんだ」
「……そうしたら、楽になるのかなあ」
 少年は微笑みながら頷く。
「ほら!」
 秋桜が、キラキラと輝きながら浮かび上がりだす。頭上まで上がって降り注ぐ。空が見えないほどの花、花、花!
「つかまえて!」
 私は迷った。

 秋桜星が降り止んで辺りに静けさが戻る。
「……もういいのに」
 少年が悲しげに笑う。私は星をつかまえなかった。

 秋が来るたびに悲しくても、寂しくても、お兄ちゃん、あなたを忘れない。
その他
公開:21/10/06 10:44
更新:21/10/06 17:27

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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