世界の終わりにひとりは嫌だ

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森脇はいつも大口を開けていた。山際はいつも狐の仮面を付けていた。そのまま2人は大人になった。
「何をしているの?」夏祭り、神社の境内に座っている森脇に山際が聞いた。
「…優しさ、取り込む」と森脇は答えた。2人はそれから徐々に仲良くなった。色んな話をした。本当に、色んな話をした。いくら話しても話は尽きなかった。それよりも早く尽きたのは世界の方だった。
宇宙の組成が崩れて蘇生を誓った神はもうとっくに匙を投げていた。
「何を投げたの?」大口を開けたまま森脇は聞いた。
「匙だよ」神は笑顔でそう答えた。そうして森脇の影に隠れている山際の狐の仮面をそっと取り、「もう君にはこれは必要ないよ。私が返しておくね」と優しく言った。
地獄の蓋が開いているのに誰も気にしなかった。誰も何もしなかった。そうして世界は落日を迎えた。
世界の終わりに大口を開けて笑っていたのが森脇だ。それを見て眠りについたのが山際だ。
その他
公開:21/10/08 11:30

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