ケース・サドマゾ

0
1

彼女はさも当然のように言った。
「壊してください」
被虐性愛はわがままに求めてくるから嫌いだ。他人のタイミングをまるで考えない。
ため息を吐き、彼女に歪なヒビを入れていく。

彼女の熱を帯びた声は、自分を萎えさせるには充分なものだった。悲鳴なのか、快感なのか検討もつかない雄叫び。
彼女の身体に残る痛々しい痕をナイフでなぞり、私は気が沈んだ。

刃先に付着した清々しい血液は、汚らしい彼女に流れているものとは思えなかった。
これが同じ人間なのかと、蔑むように視線を向ける。

他人の快感に身を包む姿は嫌いだ。
異常性愛に自分を利用されているような気持ちになる。
こちらの気も知らず、彼女は激しくなっていく。わざと抵抗せずに痛みに身を委ねているようだ。

段々と苛々が募る。
私は彼女の予想外の表情が見たくなった。
持っていたナイフを彼女の胸に突き刺すと、彼女はこの世の一番を知った顔をした。
青春
公開:21/10/07 13:02

雪場知花

執筆と音楽が好きです!
最近は毎日投稿するように心がけています!
よろしくお願いします!


https://mobile.twitter.com/gerende0201

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容