天部の新神研修

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本堂に初来したのは新神の天部。
「先ずは参拝者の願いを受付けるお務めから」
大鈴が鳴り先輩天部が手本を示す。
『…』願いが聴き取れない。
「え?今のは…」
「健康祈願。お賽銭が拾円だからね。そのうち慣れるよ」
「お賽銭の額で…優先順位が?」
先輩は頭を振る。
「流石にソレは。如来様は平等だよ。ただ賽銭が多いと…」
大鈴が鳴る。「お、やってみ」と話は中断した。
『…合格できますように』
「聴こえました!」台帳に記す。
「今のは百円。つまり心言の大きさが」先輩は微笑む。
「でも荒業の者も居てね…あ、あの人」
男が賽銭箱に1円玉を投げる。つい耳を澄ます。
「明日のG1取れますように!」
「に、肉声」吹き出し台帳に記す。
台帳の願い全てを叶えても太平無事には成らぬのだろうか…

その時本堂に雷鳴が轟いたのかと思った。
『私以外、皆愚かでありますように!』

「これが壱万円」
…如来様も大変だ。
ファンタジー
公開:21/10/07 10:50

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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