メゾン・ギタイ34

バス通りは大きな森の公園に面していた。
この公園の入口にバス停がある。
夕暮れに、このバス停で小柄の女性が降りた。
そして、公園の入口の横に建つ築80年の古びたアパートの前で立ち止まった。
遅れて大家さんらしい中年女性がやって来た。
「10日後にはこのアパートは取り壊すけど、それまででいいんだね？」
と念を押してきた。
「はい、十分です。」と答えると鍵を渡され、彼女は薄暗い部屋へと入っていった。
大きなキャリーバッグから丸まった長いストローと奇麗に折り畳まれた
絨毯調の煌びやかな布を取り出した。
すると、彼女は窓から夜空をじっと見つめはじめた。
10日後、不思議な事が起きた。
古びたアパートは、真っ白い新築アパートに変わっていた。
そこには「メゾン・ギタイ34」と書いてあった。
一夜にして新築アパートを建てるという、伝説の「アゲハさん」がこのアパートにも
やって来たのかもしれない。