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1LDKのマンションに、甲高い声が響わたる。
名前は「響」という。妻と私の間の初めての子供だ。
体なんかぷにぷにでマシュマロのようで手の指は猫の肉球のようだ。思わず左手の親指とぷにぷにしてみると、響からいつもより低めの声が出た。試しに人差し指を触るとまた違う音が出る。順番に指を触っていると音楽を奏でることができた。どうやら指を押すと音階を出せるようだ。私は面白くなって、夢中で指をプニプにした。妻から響が大変だからと咎められたが、暇さえあればひっそりと触っていた。
「将来はきっとすごい音楽家になるぞ」と親バカを連発していた。
いつもの通りあの楽器を引きたくて会社から帰宅するとポストに大家から一通の手紙が来ていた。
「このマンションは楽器演奏禁止です」
すぐさま大家の元へ響を連れていき、指を押して見せたが同じようにわんわんと泣いているだけだった。
気まぐれなところは妻に似ているようだ。
ファンタジー
公開:21/10/05 22:35

空飛びペンギン( 関東 )

ご覧いただきありがとうございます。

俳優業の傍ら、趣味でショートショートを製作しています。
田丸先生の書籍を読んでから、楽しく作っております。
ご意見、ご感想いただけると嬉しいです。


名作文学の朗読Youtubeを行っています。
http://www.youtube.com/@akky_roudoku

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