トラック海

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 トラック平線に日が沈んでいく。
 名勝トラック海。私達がそう呼ばれるようになってどれくらい経ったのだろう。
 時空転送装置が普及した現在、荷物を運ぶために働いていた私達トラックは仕事を失った。世界中から不用品として集められた私達は、いつしかトラック海と呼ばれるようになった。もはや処分すらされない。人類の技術進歩、それによって形成された新たな名勝として景観を楽しむ人もいるほどだ。

ガタッ
 ほら、誰かが現役時代を思い出して音を立てている。すると眠っていた仲間達が目を覚まし、次々に音を立てる。
ガタッ、ガタッ、ガタガタ
 波紋のように拡がるその音は、不用品として放置された私達が持つ、物を運びたい願望の表れなのだ。
 
 人々はまだ、手に入れた便利さに甘えてよく見えていないだろう。トラック海がじわじわと大きく拡がっていることに。
 そう、私達の夢は、地球を包み、運び、宇宙を旅することなのだ。
その他
公開:21/10/05 21:07

おおつき太郎

面白い文章が書けるように練習しています。
日々の生活の中で考えたこと、思いついたことを題材にしてあれこれ書いています。


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