昔の新人指導員

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自分が新卒入社してまだ2年しか経っていないのに、いきなり新人社員の指導員になった。
人を指導するなんておくがましい、そんな役割は豊富な経験を積んだ後の話であろうと考えていた。
ただ今思えば当時の日本経済は高度成長期であり、年率10%もの成長を続けていた。毎年多くの新人が採用され、或る意味まるで新人が新人を指導するような状態になってしまっていたのだと思う。

ついこの前までは自分が指導員の先輩を煩わしていたのに、一人立ちするどころか、半人前以下で教えなければならない。
さらに、新人指導もしながら自分の仕事もこなさなければならず、両方は可成り負担となった。

時には勉強だと言って得意先の商談に同席させ、帰りには喫茶店でコーヒーを飲みながら、偉そうに先程の商談の解説をした。
信念や心構えなどは、業務を熟しながら自然と身に付くものだと言い切った。
その新人が翌年には、新人の指導員になっていた。
青春
公開:21/10/05 15:29
更新:21/10/05 16:56

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