ハトカー

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長らく伝書鳩として活躍したハトだが、今は街の広場や公園に飛んできて群れで集まり、悠々自適な生活を送っていた。
昔は通信手段として重宝がられたハトも、フンに病原菌が含まれるなど不潔で、いつしか忌み嫌われるようになっていた。
そこで、鳥の愛好家たちが街と協力し、たくさんの鳩舎を郊外の一箇所に設置した「ハトの楽園」をつくった。お蔭でハトは挙って街中から楽園に移住した。
ハトの楽園では、動物園の飼育員のほか鳥類学者、そして警察官が常駐していた。実は、ハトの楽園の真の狙いはハトの再教育プログラムにあった。
楽園でさまざまな訓練を受けたハトは、特殊技能試験に合格すると「ハトカー」として街に貢献する。
ハトカーは、パトカーの役割を担うハトだ。警察の紋章を付けて街をパトロールならぬハトロールする。中には紋章を付けていない覆面ハトカーもいる。
こうして厄介もの扱いされていたハトによって、街の治安は守られた。
その他
公開:21/10/03 07:21
伝書鳩 ハト 広場 公園 鳩舎 楽園 飼育員 鳥類学者 警察官 パトカー

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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