やさしい時計さん

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 朝は時間が経つのがあっという間だ。顔を洗っただけで5分が過ぎる。何かがおかしい。
 時計へ疑いを抱いた私は、着替え中、服の中からこっそり時計を見てみる。すると、顔を真っ赤にしながら、秒針を高速回転させる時計の姿があった。
 見てはいけないものを見てしまった。
 動きの固まった私を不審に思ったのか、時計は秒針の回転速度を緩めながら、そっと私の方へ視線を向けてくる。
 ばっちりと視線が交わり、音の無い時間が流れる。
 我に帰り、歪に口を開け、盛大に驚いてみせる時計は素早く顔を時計の中に戻した。
 「……時計の仕業かぁ」
 呆気に取られながら着替えを再開すると、再び時計が顔を出して、「いや……」と声を掛けてくる。
 「仕業ってのは酷くないですか? 全部あなたのためなのに」
 「俺の?」
 「そうですよ。いつも早く帰りたいって言ってるから、少しでも巻いてるんじゃないですか」
 「優しいんだ……」
ファンタジー
公開:21/10/03 22:54

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