最高のおもてなし

料理人とは客ではなく料理に敬意を払う。丁重にもてなし、最高の味を引き出してもらえるよう、素材とまな板の上で交渉するのだ。
先程、生きのいい魚を預かった。私は魚にストレスを与えないようそっと包丁を入れる。必要であれば食事も与えよう。満腹は幸福に繋がる。幸福感に満たされる素材は最高の味を引き出してくれる。
客へのおもてなしはホール担当に任せておけばいい。私は料理人として素材に最高のおもてなしをするとしよう。
調味料は細やかさが命。野菜だって生きている。新鮮さを失わない内にどうぞ召し上がれ。
こちらのお飲み物は先程の魚を活かす為にご用意致しました。酒など無粋ですよ。素材が喜ぶ料理をご堪能下さい。
どうです？ご満足頂けましたか？それは良かった。では私、次の料理の仕込みへと入らせて頂きます。
丁度今、目の前の素材が幸福感に満たされているようなのでね。山猫軒の主様、今宵も最高のおもてなしをご堪能あれ。