建設中

入居したタワーマンションはスペインのガウディ風。家賃は格安だが条件がある。エントランスにある木材、石などを一つ担いで最上階に上がってそこに置く。マンションに入る時に荷物一つを運ぶという条件でタダに近い家賃で住める。文句はない。
何度も運ぶうちに事情がわかった。マンションはまだ建設中。三十階までできているがさらに上へ上へと建設している。これもガウディ風。建設費節約のために住人に資材を運ばせているのだ。俺は別に嫌じゃない。そのうち工事の人と顔馴染みになる。次はこれを運んでと言われるとすぐに降りて荷物を運ぶこともある。われながら働き者だ。
ある時、エントランス脇から談笑が聞こえた。ドアから覗くと十人ほど騒がしい。昼から飲酒している。顔見知りの管理人が話しかけた。
「感謝しています。マンションの一割の人が働くんです。引き続きよろしく」
俺はマンションのプレートを改めて見た。
「蟻塚マンション」