『私には夢がある。いつか小さい花屋を営んでみたい。』

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リビングのソファで珈琲にそっと口をつけた。
輸送される殺人犯が静止画となりTVに映り出される。
凶悪犯として選りすぐりの表情を切り取られた犯人は同年代だった。
車に乗り込む所を繰り返される編集をされた犯人はキャラクターのようで
さも人を殺す為に生まれて来たような印象を持ってしまう。
「この人には夢とかなかったのかしら…」ふとそんな事が気になった。
誰しも生まれながらに殺人犯など存在しない。
何処かで道を踏み外し犯罪者へと堕ちていくのだ。
盛大に一歩踏み外し転落するのか、滴りに気づかず膝下の水に気付いた時に足元をすくわれるのか。
久しぶりの静寂を味わう為に本を開いたが内容は入ってこなかった。

すっかり冷めてしまった珈琲に口をつけると同時にインターホンが鳴った。
玄関へ数歩進むがふとよぎった。「私も同じように映るのかしら」
踵をかえすと、旦那の遺体を横切り誰かに向けてメモ帳に走り書きをした。
ホラー
公開:21/10/01 13:57
更新:21/10/01 13:59

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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