最強の生物兵器

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 それは見たこともない異様な生物だった。

「これが、完成品?」

 毛むくじゃらの全身、うねくる長い尾に顔をしかめつつ、私は白衣の科学者に問いかけた。

「そうだ」
「あらゆる争いを終結させ得る最強の生物兵器──その言葉を信じ私はこれまで支援してきた!」
「ああ、おかげで俺は、子供のころ夢の中で見たこの生物を再現できた」

 彼の妄想を具現化するため、私は国防予算の大半を使い切ってしまった。

 絶望する私の足に、その生物がまとわりつく。

 にゃーん

 そして上目遣いで鳴いた。
 不思議だ。それを見ていたら、何もかもどうでもよくなってしまう。

「夢の中では、“ねこ”と呼ばれていた」

 それは、この惑星のいかな言語体系からも外れた奇妙な発音だった。

 ──数年後。

 暴君で知られた隣国の皇帝と私は、堅い握手を交わしていた。

 互いの胸に“ねこ”を抱き、満面の笑みを浮かべて。
SF
公開:21/10/01 12:15
更新:21/10/01 12:33

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