12
5
「ただいま。新しい梨、買ってきたよー」
意気揚々と妻が買い物から帰ってくる。美味しい果物の多いこの季節、妻の最近のお気に入りは梨だ。
「おかえり。今度はどんな?」
私も梨を好む者として、どんな梨なのか気になる。
「ふっふっふ。今日のは、こんなに大きいの。食欲の梨っていうんだよ」
「で…でかい」
梨を載せている手がぷるぷる震えている。大きさはボーリングの球くらいか。
「栄養をいっぱい摂ったから、実も大きくて甘いんだってー。何でも、秋になって梨の木も食欲を持ったらしくて、自分で栄養を摂るようになったとか」
「梨の木が、自分で?」
「そう。枝はトゲトゲで、生き物に絡むくらい長く垂れ下がるらしいよー。しかも動くの。そして、木の幹の一部が口みたいに開いて…」
「そういえば、梨の表面に赤い点々が」
「…人の血じゃないといいねー」
その梨は、この秋一番の美味しさだった。
意気揚々と妻が買い物から帰ってくる。美味しい果物の多いこの季節、妻の最近のお気に入りは梨だ。
「おかえり。今度はどんな?」
私も梨を好む者として、どんな梨なのか気になる。
「ふっふっふ。今日のは、こんなに大きいの。食欲の梨っていうんだよ」
「で…でかい」
梨を載せている手がぷるぷる震えている。大きさはボーリングの球くらいか。
「栄養をいっぱい摂ったから、実も大きくて甘いんだってー。何でも、秋になって梨の木も食欲を持ったらしくて、自分で栄養を摂るようになったとか」
「梨の木が、自分で?」
「そう。枝はトゲトゲで、生き物に絡むくらい長く垂れ下がるらしいよー。しかも動くの。そして、木の幹の一部が口みたいに開いて…」
「そういえば、梨の表面に赤い点々が」
「…人の血じゃないといいねー」
その梨は、この秋一番の美味しさだった。
その他
公開:21/09/28 18:00
2021年7月、投稿開始。
小説を読むのが好きですが、書くのも楽しそうで始めてみました。
読んでいただければ幸いです。
ログインするとコメントを投稿できます