地下足袋のソール

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たったひとつの豆知識をずっと喋り続ける妖怪が20年ぶりに見つかったと祖父から電話を受けた。その妖怪の目撃情報は全国各地で報告されてきたが平成13年の夏を最後に途絶えていた。
「地下足袋のソールにゴムが使われるようになったのは明治時代のことなんですよ」
奥飛騨の温泉でその妖怪と直接話したという祖父は無銭宿泊が趣味の強烈な嘘つきだから、私は話を聞き流して宿泊費の支払いに奥飛騨へと向かった。
祖父の話によれば妖怪の名はアッスンヌピュピュ。視力検査をするなら星空に君の笑顔を浮かべて、という意味らしい。本来はナイジェリアで都市部に迷いこんだダチョウを砂漠に連れ戻すのが好きな妖怪で、日本の動物園に出荷されたダチョウの胃袋に寄生してやってきたのだろう。その妖怪はダチョウと同等の視力があって脳より大きな眼球をもつという。話を聞くうちにその妖怪が祖母にとても似ている気がしたが、私はやはり聞き流すことにした。
公開:21/09/28 13:50

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