思い出

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朝、鳥の鳴き声で目を覚ます。
小さな寝息を立てる君がいる。
口に入りそうな髪を耳にかけてそっと頭を撫でる。

屋台で買ったりんご飴を舐める君が玉の落ちた線香花火をバケツに入れる。

小さなショートケーキに沢山ロウソクを立てて、焦げたクリームを笑いながら口に運ぶ。
はじめて飲んだお酒はまだおいしくなかった。

君が別れ際にパーカーの紐をつかんで遊ぶから終電を逃して泊まることになった。

お揃いの服で商店街で買い物をした。
肉屋のおじちゃんにお似合いだねと褒められて、君の口元が緩む。

君の耳にピアスを開ける。
お互いに緊張で震えてうまくできなかったから、結局ショップのお姉さんに開けてもらった。


君の好きな曲をプレイリストに入れる。

君の好きな映画を見る。



君との思い出を咀嚼する。

君との思い出を反芻する。


もう味はしない。



君を思い出にした。
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公開:21/09/30 03:09

ねことまと( 日本 )

大量のインプットを受けた後のアウトプット用
ショートショートとは言えないような短い物語を書いてしまっています。

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