猫の足跡

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 猫の足跡がくっきりと乾燥中のコンクリートの上に点々と続いているのを見てその場にしゃがみ込んだ。
 父の家をリフォームしている最中の出来事だった。よりによって猫嫌いの父だ。激昂する姿が目に見えた。
 妻がすぐに電話をし、やり直しの段取りをつけた。
 左官屋がやり直し作業をしている間、外の警戒に気を取られて、貼り直した障子に穴が開けられた事に気づかなかった。気づいた時には猫の気配はなく妻と頭を抱える事となった。
 その夜は泊まり込むことにした。妻は猫が好きなのもあって、猫の為にあれこれコンビニで用意していた。
 寝ていると外で何やら音がする。恐る恐る懐中電灯を手に庭に出ると、その音は庭の物置からする。ゆっくり開けると、キラリと光る両目が見えた。
「あっ」
 びょんと飛び出た猫が一度振り向いて去っていく。猫がいた場所にはふくよかな招き猫が一体、ころりと妻の両腕に転がり落ちた。
その他
公開:21/09/29 16:46
更新:21/09/29 17:09
猫あるある 招き猫の日

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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