最高のおもてなし

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くたびれた背中にお湯をかけ、タオルで擦っていく。
「親父、気持ちいいか?」
『ああ、極楽極楽。お前が持ってきた酒も美味い。この和菓子…また腕を上げたな』
親父の声なき声に苦笑いを浮かべる。
「ごめんな…本当はもっと墓参りに来るべきなのに…」
『なぁに。彼岸は来れんでも盆には来て、こうして儂の墓を磨いてくれとる。最高のもてなしじゃよ。これ以上何を望むと言うのだ?』
「そっか…ところで紹介したい人がいるんだ」
『連れのおなごか?もしや彼女か?』
「妻だよ。俺、結婚したんだ」
『本当か!それはめでたい!おい!儂にこの酒はもったいない!あの子に飲ませてやりなさい!あああとこの和菓子、これも渡しなさい』
これじゃどっちがもてなしているのか分からないな。
「でさ、来年には子供も生まれるんだ」
『何!こうしちゃおれん!初孫をもてなす準備を儂も始めなければ!』
慌ただしい雰囲気を感じた妻は俺を見て笑った。
公開:21/09/26 20:48

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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