壁時計の妖精

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気付けば、もう16時だった。
15時から研修医のダン君にエコーの指導予定であった。
顔を上げると、外来の壁時計が目に入った。
長針が3時を指していた。
その先に何か動くものが見えた。
(虫か?)
近づいてみると、そこには小さな妖精が寝そべっていた。
目をこすりながら顔を近づけると、この妖精が何か言っている。
「おいら、1時間ぐらいなら時を戻せるぜ。やってやろうか?」
(俺の心を見通しているのか?)
「助かるよ。15時に戻してよ。研修医にエコーを指導出来る。」
「お安い御用だ。おいらに任せな。」
(早速、研修医に連絡して準備しよう。)
「ダン君、外来終わったから、エコーやろうよ。」
「先生、僕16時半から研修会なんですよ。」
「えっ、今何時?」
「16時20分です。」
「あれ、・・・。」
結局、壁時計は15時になっていたが、時間は変わらなかった。
さっきの妖精は居なくなっていた。
ファンタジー
公開:21/09/24 07:36

ひまわり広場( 神奈川県川崎市 )

産婦人科専門医/指導医
@sanadakuma
tama-himawari3w.com
身体は日々の食事で出来ている。
妊婦さんにも食事の重要性について情報提供しています。
ダイエット中の方々にも食事・睡眠・運動の重要性について情報発信しています。
自身が「愛着障害」であることに気付き、もう一人の自分と上手に共生しています。
自分が、自分の『安全基地』になることが生きていくための拠り所なのかもしれない。
科学的な視点からの表現も交えて、ショートショートストーリーを作っています。

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