右上の広告

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「ハハハ、ホント右上の広告くらい邪魔だよね!」
「え…右上の何?」
物心がつく頃から友人と会話が噛み合わない事があった。
視界の右上。そこに定期的に広告が見える。
当然皆も同じだと疑う余地は無かった。
変な人に思われるのが嫌で幼心に絶対誰にも話さないと誓った。

20年後。
初めての妊娠。臨月でいつ産まれてもおかしくない。
意識から消していた広告も紙おむつやベビー服が表示され
この時ばかりは微笑ましく感じた。
陣痛の間隔が短くなりいよいよという時、
突然右上だった広告が視界の真ん中に表示された。
痛みが驚きに勝り落ち着いてよく見るとそれは広告では無かった。
『広告無しの有料人生と広告有りの無料人生、どちらか選択して下さい』
訳が分からない部分と謎が解けた部分が交差する。
私、無料人生の方だったんだ。
破水の衝撃で咄嗟に選択してしまった。
どっち選んだ?私から聞けない。

きっと母さんも…
SF
公開:21/09/24 05:00

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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