運び屋
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私は運び屋。いつも上手くやっていた。今回もいつも通り上手くいく筈だった。仕事の流れは、こうだ。まず、コインロッカーの場所の地図と鍵が自宅のポストに届く。そして、アタッシュケースをコインロッカーでピックアップする。届け先はアタッシュケースにメモが貼ってある。あとは届けるだけ。報酬は「運び」が完了すると自動的に口座に振り込まれる。いつも通り、指定されたコインロッカーにアタッシュケースを取りに行く。鍵でコインロッカーを開ける。しかし、中にはアタッシュケースは無くメモだけ。そこには「まあ、頑張れや」とだけ書いてあった。その時、突然、二人組に声を掛けられる。「ちょっとお話聞かせてもらって良いですか?」明らかに進行方向を塞がれている。マズイ。私は、そんな事はおくびもに出さず笑顔で「なんですか?」と惚ける。同時に比較的痩せている方の男にタックルし全速力で走り出す。それが人生をかけた逃避行の始まりだった。
ミステリー・推理
公開:21/09/25 17:05
時折、頭をかすめる妄想のカケラを集めて、少しずつ短いお話を書いています。コメントは励みになります。
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