ペンは剣よりも強し

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廃刀令の布告の後、私はすぐに刀を置いた。
武家に生まれ、腕に覚えはあれど、刀が好きではなかった私はこの日が来るのをずっと待っていた。
代わりに持ったのは筆だ。幼少の頃、富嶽三十六景を目にした時より画家になりたいと願っていた。
空間を把握する修行の一環、と言えば両親も絵描きを咎めない。絵描きを正当化させる為に武芸も磨いた。その甲斐あって、私は人の筋肉の動きを正確に捉える事が出来る。絵描きが強さへと繋がった。
そんな私が刀を置いたのだ。当然、私の強さを知る武士は憤慨した。何故戦わぬ!と。何故って、興味がないからだ。
その武士共は有ろう事か夜道で奇襲を仕掛けてきた。刀を持たぬ私は胸元から筆を取り出す。
筆の墨を目に向けて飛ばしてやるだけで怯む愚か者共め。顔に×印をつけ、腕を捻って追い払ってやった。筆で良かったな。刃なら死んでいたぞ。
あとその墨は落ち難い。日が出てから改めてお礼参りをさせて頂く。
公開:21/09/21 20:38

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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