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ここに越してきて良かったのは、こうやって徒歩2分の所にコンビニがあることだけじゃなかった。
鈴虫▪▪▪。秋の便りを届けてくれる名演奏家のコンサートがこうして毎晩開かれていることも田舎暮らしが長かった僕にとっては喜ばしいことだった。
それにしてもこんな街中でも鈴虫の音色が聞こえてくるとは思わなかった。緑は周りには殆どない。それでもこれだけ存在感たっぷりに聞こえるのだから流石の一言だった。
しかしある晩、奇妙な事が起きた。
いつものコンビニ帰り、辺りから聞こえるのは鈴虫ではなく蝉の声。
夏は終わったはず。何より夜に蝉が鳴くなんて。
翌日、市役所に抗議の電話が殺到したらしい。聞くところによると毎晩タイマーで鈴虫の音色を街中のスピーカーで流していたらしいが、夕べは間違って蝉の声を流してしまったらしい。
まさかの展開にショックだったが、引っ越すつもりはなかった。やっぱり徒歩2分のコンビニは魔物だ。
ミステリー・推理
公開:21/09/22 08:10

セイロンティー( 鹿児島 )

初めまして。昔から小説を書くのが好きでした。ショートショートの魅力に取り憑かれ、日々ネタ探しに奔走する毎日です。
小説のコンセプトは【ドアノブの静電気くらいの刺激を貴方に】です。
皆様、どうぞ宜しくお願い致します。

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