まよなかの写真竜

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 時刻は深夜0時。そろそろ寝ようかと思っていると、玄関からバサッと音がした。向かってみると新聞が一部。こんな時間に郵便?と訝しみながらも拾って目を通す。文章は初めて見る文字ばかりで、理解出来るのは妙な生物が写っている写真だけだった。細い体や全身を覆う鱗は蛇のようだが、背中に翼があり、胴体には太い手足、そして写り込んでいる家より圧倒的に大きい。
 写真をじっと見ていると、その生物と目が合った。咆哮を上げ、家々を壊しながら近づいて来る。恐怖で新聞を投げ捨てると、視界が一気に明るくなり前髪の先端が焦げた。写真から火を吐かれたのだ。
 訳が分からぬまま死を感じたその時、玄関の扉の向こうから「あ、間違えた」と抜けた声がした。次の瞬間、扉の郵便受けから、細長い手の形をした影が入り込み、凄い勢いで新聞を引っつかんで出ていった。
 心臓を押さえ、恐る恐る覗き穴から確認すると、外には誰も居なかった。
ファンタジー
公開:21/09/22 00:00

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