敬老庁

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首相所信表明演説を始めます。
人生百二十年時代において超高齢化問題に一丁目一番地で取り組んで参ります。
老人が人生を謳歌できるよう手厚い施策を講じて参ります。
老人国債を発行して老人のための財源を確保し、オールドノミクスによる老人の富拡大と強力な福祉政策を推し進めます。
そのエンジン役として「敬老庁」を創設し、老人が真ん中、主役の世の中をつくって参ります。
敬老庁では、老人の孤独死を撲滅するため、地域版老人ホームとして、老人ビレッジに全国の老人を集め、カメラで見守り続けます。DX、デジタルトランスフォーメーションを駆使し、老人がいつなんどきに倒れても救急ドローンで病院に運べるよう医療体制を整えます。

首相肝煎りの敬老庁によって、老人は姥捨山のような老人ビレッジに隔離され、監視社会の下に置かれた。老人に対する差別が助長されて敬老とは真逆の現象が起こり、内閣総辞職とともに敬老庁は廃止された。
その他
公開:21/09/20 07:05
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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