037.牧場

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「もうカトちゃん!くっかないの」
 足に擦り寄る感覚で一番人懐っこい子だと分かりそっと離す。
 目の見えないわたしにとって不意の接触は命取りだ。なので、小屋の掃除も人一倍時間がかかる。
「ブレちゃん。いい加減離れなさい」
 餌箱にがっつく子を優しく押し退ける。硬い鱗に覆われたその姿はとても醜悪というけど、それが見れないわたしにとっては、この子たちは充分にかわいい存在だった。
「うん?パスちゃん。何これ?」
 一番やんちゃな子がじゃれついていたものに手を走られた。質感は間違いなく石。だけど形は。
「はぁ、またか。ほらみんな。他の人呼ぶから奥に移ろう」
 それは、家畜泥棒の成れの果てだった。
 この子たちは、見た目こそ不人気だけど、とても需要があり、今回のようなコソ泥騒ぎが絶えない。
 でもなぜかこの子たちの価値は出回っても、絶対に目を合わせてはいけないという注意は一向に出回る気配がないのだ。
ファンタジー
公開:21/09/19 19:33
ファンタジー 牧場 盲目

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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