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私の兄は魔法使いだった。
「やっちゃん、みてな。3.2.1で信号が青に変わるぞ、3.2.1…な!」
「兄ちゃんすごい!やっちゃんも!やっちゃんもしたい!」
8つ離れた兄は、記憶にある限りいつも優しく微笑んでいた。優しい人なのだ。私がしょうもないことでなきべそをかいているときは、笑いながら「やっちゃん笑って?」と魔法を見せてくれる。
別にそれが本物の魔法だったかなんてどうでも良かった。ただ、いつも私を笑顔にしてくれる優しい兄が大好きだった。
大人になるにつれ、世の中は優しいだけではないと知った。
優しい人が世界に優しくしたとして、世界がその人に優しいとは限らないのだ。
誰が悪いなんてことはない。ただ、兄にとって、この世界は優しいものではなかったのだろう。
「ねぇ兄さん、今度は私が魔法をかけてみせるから、だからどうか…」
私の声は届いているのだろうか?固く閉ざされた扉は今日も開かない。
「やっちゃん、みてな。3.2.1で信号が青に変わるぞ、3.2.1…な!」
「兄ちゃんすごい!やっちゃんも!やっちゃんもしたい!」
8つ離れた兄は、記憶にある限りいつも優しく微笑んでいた。優しい人なのだ。私がしょうもないことでなきべそをかいているときは、笑いながら「やっちゃん笑って?」と魔法を見せてくれる。
別にそれが本物の魔法だったかなんてどうでも良かった。ただ、いつも私を笑顔にしてくれる優しい兄が大好きだった。
大人になるにつれ、世の中は優しいだけではないと知った。
優しい人が世界に優しくしたとして、世界がその人に優しいとは限らないのだ。
誰が悪いなんてことはない。ただ、兄にとって、この世界は優しいものではなかったのだろう。
「ねぇ兄さん、今度は私が魔法をかけてみせるから、だからどうか…」
私の声は届いているのだろうか?固く閉ざされた扉は今日も開かない。
その他
公開:21/09/19 16:09
思いつくまま、気の向くまま。
自分の頭の中から文字がこぼれ落ちてしまわないように、キーボードを叩いて整理整頓するのです。
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