大切な仕事

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目を覚ますと男が立っていた。
私に気付くと男は静かに話し始めた。
「私は死神です。あなたを迎えに来ました」
唐突に言われ混乱する。
私は納得できず、他の人と代われないか懇願した。我ながら自分勝手だとは思ったが必死だった。
男は首を横に振る。

「じゃあアンタが死ねよ。代わりにアンタが死ねば人数も合うだろっ」

私は混乱と怒りで思わず口走ってしまった。
男の返事は意外だった。
「いいですよ。上に相談します。好きでやってる仕事じゃないんで」
最後の方は独り言のようだった。
そして男は消えた。

私はその日死ななかった。

それから200年経った。
私はまだ生きている。
私だけではない。男に会った日から人間は死ななくなってしまった。
150歳を超えると自分の意思で体を動かせず、苦痛を感じるだけの毎日が続く。
私は本当に自分勝手だと思いながら、あの日の彼が迎えに来ることを切に願っている。
ホラー
公開:21/09/19 14:40

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