名もなき花の話

娘が生まれた。それはそれは可愛い娘だ。
夫の遺伝子が強いのかな？見た目は殆ど人間と同じ。
でも私の遺伝子もちゃんと受け継いでいる。頭頂部には髪の毛より早くに双葉が生えている。アルラウネの証だ。
この子は一体どんな花を咲かすだろう？
人と結婚し、子を成したアルラウネは前例がない。だから皆、私と娘を心配そうに見つめる。
娘が目を開いた。凄く綺麗な瞳…思わず吸い込まれそうになる。
この子はきっと男女区別なく虜にする魔性の花になるわね。
その証拠にほら、夫はもう娘にデレデレだ。これじゃ先が思いやられる。甘やかしすぎないよう、釘をさしておかなきゃ。
私は娘の双葉を見る。彼女はここにどんな花を咲かせるだろう？
今は名もなき花。だがいつか、彼女の名が世界に轟く日が来るかもしれない。
私はその花道を応援しよう。
その話を夫にしたら「ヴァージンロードなんてまだ早い！」って言われた。
貴方こそ気が早いわよ。