カツオ

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 刺身の盛り合わせを頼んだら、全部鰹だった。
「おい、オヤジ。これは盛り合わせじゃない。単なる鰹(カツオ)の刺身じゃないか」
「何言ってんだい。ちゃんと盛り合わせになってらあ」
 オヤジが言うには三種類、ちゃんと盛り合わせになっている。ただ、食べる順番が大事なのだという。
 まずは堅魚(カツオ)。口に入れると物凄く堅い。顎が痛くて堪らないが、引き下がるのも癪なので、言われるままに次の勝魚(カツオ)を食べた。これは普通だ。そして再び堅魚を食べる。
「お?」
 どういうわけか、今度は普通に食べられた。
「堅魚の堅さに、勝魚が勝ったんでさ」
「へえ、これは面白い趣向だ」
 気を良くしたオヤジは、魚の唐揚げの小鉢をサービスしてくれた。食べた感じはカツオの血合いの唐揚げだが、どうも違う。
 体中に力とやる気が漲って来る。
 どうやらカツオの血合いではなく気合いの唐揚げだったらしい。
その他
公開:21/09/20 12:12

堀真潮

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