雨に遊離脂肪酸

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険しい山道でチームメンバーの数が減った。残りは五人か六人か。崖沿いの山路から一人二人と脂肪の塊となって落ちていった。奴らが狙うのは俺たちの脂肪。転落した谷底で待ち受けては監禁して「処理」する。俺たちは抵抗して登り続ける。
ごつごつした岩の隘路に入った。
驟雨だ。奴らが仕掛けた酸性雨に違いない。この雨に打たれると俺たちは分解し飛び散って渓流に流れるしかない。遊離脂肪酸となる。結局、奴らに搾取される。いっそのこと俺たちから谷底に向かって奴らを攻めるという手もある。しかしこの崖から飛び降りるのは勇気がいるし、その後やはり俺たちは監禁されてしまうに違いない。
俺たちは登り続ける。岩の上からまた雨が降ってきた。そして二人が落ちた。残るものは進む。岩のくぼみに隠れて酸性雨を避けてじっとする。俺たちは落ちるわけにはいかない。絶対に落ちないように進むだけ。だからこの話はいつまでも落ちないのだ・・。
その他
公開:21/09/18 16:26

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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