メロンソーダと臆病な青春

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授業をサボって屋上で横たわっていた俺の傍らに突然、その女は現れた。そして俺の脇にメロンソーダのジュース缶を置くと、自分も手に持っていた同じ缶を空けてごくごくと飲み始めた。俺は横目でそれを眺める。風が吹き抜け、俺の刺々しい金髪とは対照的な女の長い黒髪を靡かせる。
俺はこいつに勝てた事がなかった。勉強も運動も背丈も…いつもこいつが一歩先を行っていて、俺がその背中を追っているような感じになっていた。
ふいに腹が立って起き上がると、女の唇に俺のそれを重ねた。少しして離れると、女は俺に向かって微笑を浮かべていた。それに恐怖した俺は、その場から逃げ出した。俺の悪戯に微笑で返した女。結局、俺は卒業するまで一度も勝てなかった。

あれから歳月が過ぎ、風の便りで女が病で逝ったと聞いた。勝てたのは寿命だけか、と独りごち、皺の増えた手でメロンソーダを空けて流し込む。甘ったるい刺激に咳き込み、眼前が潤んだ。
青春
公開:21/09/17 22:53
更新:23/07/24 14:46

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