取っ手、生首
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ちょっと前から風呂場のドアの取っ手に生首が憑いた。「四谷怪談」に出てくるお岩のような顔で、中途半端に長い黒髪をだらりと垂らし、落ち窪んだ眼でこちらをじっと睨んでくる。そんなに睨まれても心当たりがないのと怖いのとで無視を決め込んでいた。そんな俺の背中越しに女はごにょごにょと話しかけてくる。正直、五月蝿い。こんな事が毎日続いてはさすがに堪らない。とうとう我慢の限界に達した俺は、女におもむろに尻を向けると…ブゥーーー!!と盛大な放屁をお見舞いした。女は一瞬、仁王のようなしかめっ面をした後、くるくると激しく首を回しながらあっけなく消え去った。以来、見かけていない。
平和が戻ったのもつかの間。今度はコンロの火から異国風の窶れた男の生首が浮かび、英語でしきりに話しかけてくるようになった。
「Hello! how are you?」
ヘルプミー。
平和が戻ったのもつかの間。今度はコンロの火から異国風の窶れた男の生首が浮かび、英語でしきりに話しかけてくるようになった。
「Hello! how are you?」
ヘルプミー。
ホラー
公開:21/09/16 12:28
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