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私の出生地には古い習わしがある。男子が十五歳になると島の北端で(生地は島である)儀式が行われる。十五歳の私は浜辺で大きなガラス管に入って蓋を閉められる。人ひとり入れる、瓶と呼ばれていた。瓶は海に流される。食べ物も水も与えられず二日間波に運ばれる。瓶の中で飢えと渇きに耐えた私は三日目の朝に浜に着いた。どこかわからない浜には面をつけた数名が瓶を引き揚げて蓋を開ける。私は握り飯と水を与えられて近くの祠に向かう。小さな祠に一人で入る。なかには像が一体。異様な顔つきで両腕を張って胸の前で合掌している。腕の肘のあたりから黒い液体が垂れている。左右どちらの肘から垂れるかを観察する。右肘からなら男子は戻って扉から出る。左肘から垂れていたら奥の扉を開けて暗い通路へと進む。私は右肘だった。だから今、こうして語ることができる。左肘の場合、暗い通路から出てきたものはいない。遠い国に売られると聞いたことがある。
その他
公開:21/09/16 09:41
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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