カリニイと箪笥戦争

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敵の箪笥が首都の至る所に積み上げられるようになった午後。戦地に向かう私に国境警備の老女はケガの治療なのか蒲鉾を腕や腰に貼りながら「年の数は運ぶんやで」と気怠く言った。砂塵の舞う灼熱の荒野を前線に向かうと白骨化したキリンを居抜きで使うコンビニがあって、戦地にいるはずの仮兄がレジに立っていた。傷だらけの体には古い蒲鉾が黒ずんだまま貼られていて、その痛ましさに私は言葉を失った。父親が結婚と離婚を激しく繰り返したことで私たちは兄妹だったことがある。牛のような兄の鼻輪は私との再会を願ったミサンガ。レジに立てばいつか私に会えるからと兄は軍を脱走してこの店で働いた。戦いに疲れ果てた兄のコロッケみたいな髪に触れる。いつまで国はこんな不毛な戦いを続けるのだろう。国力の差は明らかで前線にはもう小児用の箪笥しか残っていない。私は今夜兄の鼻輪をつけて突撃する。狙うは敵将の寝室。とびきりかわいい箪笥を搬入するわ。
公開:21/09/17 17:56
更新:21/10/07 10:37

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