最強の赤ちゃん

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 弟が生まれた。
 ママは弟の康ばかり可愛がっていて面白くない。僕はママがいない時、康のほっぺたをムニって引っ張ったり髪をぐしゃぐしゃにしたりおでこにデコピンしたりした。
 ある時、突然康が目を開けると僕を見た。ギョッとする。
「おい、何すんねん」
「あ、赤ちゃんなのに、しゃべった!」
「いつも黙っとったけどもう我慢の限界や。兄ちゃんが寝しょんべん隠しとったことも、牛乳を飲まずにこっそり庭に捨てとったことも、俺様をいじめとることも全部ママにチクってもうてもええんやで」
「い、いやだよ」
「だったら俺様のいうこと聞きや」

 あれから三ヶ月、僕は康の言いなりだ。
「健ちゃん、最近、戸棚にしまってあるお菓子、勝手に食べてるでしょ」
「ち、違うよ、康が」
「康ちゃんは赤ちゃんなんだから食べるわけないでしょ」
 ゲフゥ。
 大きなゲップの音にママと振り返ると、丸々と太った康が豆大福を頬張っていた。
その他
公開:21/09/17 12:45

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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