名もなき花の話

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吾輩は花である。名前はまだない。
吾輩はこの国の生まれではない。渡り鳥に連れられやって来た、いわば不法入国の外来種。そんな吾輩が大手を振って一花咲かせようなんておこがましい。大多数の陰に隠れ、片隅でそっと咲くのがお似合いだ。
交配しようなんて思ってはいけない。吾輩はここで孤独に枯れて死ぬのだ。外来種の種を残してはいけない。
だが吾輩、偶然にも同郷の花と出会った。話も合った。いずれは結ばれ、種子を残したいとも思った。
しかしそれでは侵略的外来種になってしまう。どうしたものか…
悩む吾輩達の前に1羽の鳥が降り立った。そうだ!鳥に種子を運んでもらおう!
吾輩は鳥に頼んだ。吾輩達を食べてもいい。その代わり、故郷に種子を運んでもらえないか?と。鳥は快く受け入れてくれた。
吾輩達は食われた。だが種は残せた。

私は今、両親の故郷で咲いている。名を残すべく、海の向こうの世界に行きたいと思いを馳せながら。
公開:21/09/14 20:54

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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