悪魔のカフェ

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 私は半年前からカフェでバイトをしている。
「いらっしゃいませ、悪魔のカフェにようこそ」
 100%スマイルで今日もお客様を接客する。バイトを始めてから、私の毎日は輝いている。
「ねえ、このカフェ、悪魔のカフェって言うくらいだから悪魔的に美味しいもの出してくれるって聞いたよ。おすすめのランチって何?」
 お客様が私にそう尋ねてきたので、私は本日のおすすめを告げる。
「ごゆっくり御寛ぎください」
 私は厨房に注文を伝える。コックはいつもホールで忙しく働く私を見守ってくれている。今日も頑張ろう。
「美味しかった! また来るね」
 先程のお客様が、そう仰って帰っていく。
「人間というのは馬鹿だな。悪魔のカフェと親切に掲げているのに」
「オーナー」
 お客様は料金とともに、知らぬ間に余命も支払っていく。
 余命半年と言われた私が生き延びているのは、賃金としてお客様からの余命を頂いているからである。
その他
公開:21/09/14 11:00

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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