宇宙船とワニ

この宇宙船にはワニが乗っている。船長が言うのは、乗客全員のペットだということだ。
船長はひげに覆われた口を豪快に開きながら、軽快に説明する。
「長旅にペットは重要だ。人間だけだとどうもギスギスしてなあ。それに爬虫類は変温動物だからエサが少量で済む。とくにワニは月１回程度のエサで十分だから、世話するほうも楽だ。それに彼には重要な仕事があってな」
そういって、船長はワニの体を叩いた。ワニは面倒くさそうに、のっそりと床を這いまわっている。

宇宙旅行は長旅だから、どうしても死者がでる。
葬式になると船長は聖書の一節を読み上げ、最後の祈りをささげた。
「いつまでも我々とともに」
そう船長が宣言すると、ペットのワニを呼び寄せると、死者を丸呑みさせた。満足そうな表情を浮かべたワニは、丸々と太っていた。